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| 「犬の話」 |
今から12年ほど前、1匹の小さなミニチュアダックスを飼うことになった。
ペットショップで目が合うと「私を家に連れて帰って」と言われているような気がして 茶色い小さな子犬を連れて帰った。 その茶色の色がエクレアに似ていたので「クレア」と名づけいつでも一緒にいた。
しかし3ヵ月後…
東京の大学に進学する為に家を出なくてはならなくなり、クレアと離れなくてはならなくなった。
別れの日も「置いて行っちゃうの?」と言いたげな瞳でじっと私を見ていた。
「ごめんね。連れて行ってあげられないんだ。夏には必ず帰ってくるから。」
と言ったが姿が見えなくなると
「ワォーン」
と悲しい鳴き声がずっと車が遠くなるまで聞こえていた。
夏になり家に帰るとクレアはしっぽが千切れんばかりに振って出迎えてくれた。
「ちょっとしか一緒にいなかったのに覚えていてくれたんだ。」と嬉しく思った。
その後クレアに子供が産まれた。
モンブランのケーキにそっくりな栗色だったので「マロン」
暫くしてマロンも子供を産んだ。
その子供はココアの色に似ていたので「ココア」と名づけた。
暫く家を留守にしただけなのにクレアはやんちゃなおばあちゃんになっていた。
クレアは幼い頃の記憶があるのか私の姿を見るととても嬉しそうに
「遊んで。遊んで。」とやってくる。
マロンもママのクレアが嬉しそうにしているのでなんとなく(この人は家族なのかな?) と遠慮しながらやってくる。
しかし孫のココアは(いつも一緒にいないじゃない)と部屋から出てこない。
毎日いられないからしょうがないかと思った。
そんなある時ココアにも子供が産まれる事になった。
たまたま夏休みで家に帰っていると、皆仕事で家を留守にする事になり、1人で面倒をみる事になった。
母が
「多分今日くらいに生まれるけど、きっと夜かもしれない。」
と言って出掛けて行ったので安心していたが、何だかココアの様子がおかしい。
「どうしたの?」
と近寄ると(それどころじゃないからあっちに行って!)
と威嚇された。クレアとマロンも心配そうにウロウロしているが特に何もしてあげられない。
ココアが怒らないよう物陰からそっと覗いてみたが、やっぱり苦しそうだった。
私もどうしていいのか分からず、放っておいても生まれるものなのか獣医に行くべきか電話帳を持ったまま
電話機とココアの間をウロウロしていた。誰も相談する人がいないのでクレアとマロンに
「どうしたらいい?」
と尋ねてみたが(分からないよ)と言う目で見られた。
「2匹とも子供産んだ事あるのだから経験あるでしょ。何とかならないの?」
と言ってみたが
「・・・」
と言う反応だった。
仕方がないので人間は腰をさすってもらうと楽になると言うのをテレビで見た事があったのでやって見る事にした。
きっと人間も楽なら犬も楽だろうと思って。
ココアのいる犬小屋に入るとやっぱり威嚇されたが、腰をさすってあげると楽になるのか怒らなくなった。
しかし夏の犬小屋。かなり暑い。
仕方がないので片手は団扇、片手は腰をさすって応援した。暫くすると1匹生まれた。
「やった〜。出てきたよ。」
と言うと(それどころじゃないよ)
と言いたげに、ココアは生まれたばかりの子供を綺麗になめていた。
人間は先生に取り出してもらわないとどうして良いのか分からないのに動物は本能で知っているので感心した。
何匹お腹の中にいるのか分からないが、1匹生まれた時点でぴたりと出てこなくなった。
しかしまだお腹は膨らんでいるし、辛そうだ。
どうしようか迷っていた時、母が帰ってきたので慌てて獣医に連れて行った。
病院に着くと帝王切開が始まった。 犬でも帝王切開があるのだとびっくりした。手術からあっという間に子供が出てきた。
先生曰く1匹とても大きい犬がいたので出られなくなっていたらしい。
全部子供を出産したココアはホッとしたようにクタッと寝ていた。さすがに疲れたのだろう。
「良かったね。無事出てきて。」
と頭をなでてあげると(ホント大変だったよ)
とでも言いたげな目で見ていた。
それからと言うもの実家に帰るたびにクレアとマロンとココアが出迎えてくれるようになった。
きっとココアの中では家族と言うより同士なのだろうなと思うけど。
その為、散歩も3匹一緒じゃないと喧嘩になり、抱っこも3匹一緒じゃないと怒り、なでてあげるのも3匹一緒じゃないと
残された1匹がすねて部屋に帰るようになってしまった。嬉しい事だが手が2本しかないのでなかなか難しい。
—クレアを飼ってもう12年。
私がクレアの面倒をみようと飼ったはずなのに、実家に帰るとクレアがうちの娘の面倒を見ている。—
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