「泣き虫と弱虫」

私はとても泣き虫で、
私のペットの犬・メルはとても弱虫だった。

メルは、車のライトやケータイの照明がとても怖いらしく、
私がメルのテリトリーであるガレージでケータイをいじり出すと後ずさりする。
私は小さな失敗をして怒られた時でも、すぐ泣いてしまう。
私達は、似た者同士だった。

ある日、私はとても大きな失敗をしてしまった。
お母さんにとても怒られた。
もちろん、私は泣いた。でも、お母さんは怒ったままだった。
全てが嫌になって逃げ出したくなったけれど、私の部屋は鍵がついていなくて、
私は唯一鍵のかかる、トイレへ逃げ込んだ。
ガレージの前を通り過ぎる。
窓越しに、メルが心配そうな顔で私を見ていた。

鍵をかけてしばらく泣いて、動悸がおさまって落ち着いてきた。
私は鍵をそっと開けて廊下に出る。すぐ前には、ガレージが見える窓がある。
メルが、小屋から外に出て、円らな瞳で私を見てた。
“大丈夫? 元気出して?”
何さ。
自分だって弱虫なくせに。
でも、メルは変わらずちょこんとお座りをして、いつもより少しだけ眉根を寄せて私を見ていて。
ほんのちょっぴり、元気が出た。
涙を拭って、窓を開けて。指先を差し伸べた。
メルが、涙をぺろりと舐めた。
メルはとても、温かかった。

あれから五年。
メルは今日も、円らな瞳で私を見てる。
“大丈夫? 元気出して?”
って。
 
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